センスがない

 私は味覚の鋭いほうではない。鈍いほうでもない。まずまずの方である。

 料理は得意な方だ。作るのは好きだし、私の作ったものが残されるということもないから、そんなにひどい味ではないだろう。ジャムがうまいだけかもしれないが。

 料理が得意かどうかと、味覚の鋭さはそこまで関係がない。作るのと食べるのとは違う。例えば料理が苦手という人の中には、献立を考えるのが苦手な人がいるが、別に舌に問題があるわけではない。料理に関する発想力や知識が足りないだけだ。ポルトガルにタラのコロッケがあるから、きっとポテサラに焼き魚を入れても合うだろう・・・とか。

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イワシのポテサラ


 味付けがオカシイというのであれば味覚の問題だが、フツーの味覚をしていればそんなことにはならないだろう。

 味覚の鋭い同僚がいて、レモン汁をやや入れすぎたジャムが、サクランボジャムであることを当てて見せた者がいる。ほかの同僚は「え~?アプリコットぉ?」とか言っていた。作った私も当たるとは思っていなかった。しかし彼女は料理好きではないし、白米嫌いの偏食である。彼女のように鋭い人は白身魚5種盛りの鮨も見分けられるかもしれない。

 生来のセンスは変えられないが、ある程度知識で補うことはできる。例えば唐辛子はただ辛いわけではなく、うま味がある。パプリカパウダーや韓国唐辛子を舐めてから、頑張って鷹の爪を噛んでみると、辛さ以外の味に気づく。

 サクランボだって、きっと他の果物にはない味の特徴を言葉で理解して、その味を探しながら味わえば、見分けがつくのだろう。

 しばらく食べない、という方法もある。子供の頃には好きでよく食べていたお菓子も、大きくなるにつれ食べなくなって、独り立ちすると買う機会もなく、何年も食べなかったりする。美容院の茶請けか何かで、久しぶりに食べてみるとビックリするほど美味しくなかったりするものだ。久しぶりに食べるものには敏感になれる。

 

 分からないものは分からない、ということもあると思う。私は何杯飲んでもコーヒーは嫌いだ。