年金(企業型確定拠出年金、ideco)をデータから考察する

 ここ数年株式市場が好調で、自分も仕事辞めて一旦落ち着いて生き方を考える時間を、モラトリアムを・・・なんて浮足立っている人も多いのではないでしょうか?まあ私のことなんですが。

 

人生の夏休み

 

金利生活

 

なんて甘美な響きでしょう・・・。w

 

 別段株で大儲けしたわけではないのですが、市場に連動して確定拠出型年金も当然好調でして、仮に年利20%で年金を毎月2万7500円を積み立てていくと退職する頃には数億円になるわけだから、退職するまで生活できればそんなに働かなくても・・・なんてね夢を見てしまうわけです。年率20%が続くなんて夢物語ですが、でもでもここ数年の調子なら年利20%も楽勝という危険な気分になっています。

 

※この記事は貴方個人に投資を薦めるものではありません。社会的な関心を綴ったものです。

 

 そんな今日この頃ですが、先日、社員の皆さんの確定拠出年金の運用状況みたいなのが社内メールで流れてきまして、同僚たちの運用状況を垣間見る機会がありました。脳死MSCIコクサイに全額投入している私は圧勝ムードで、退職間際の人以外はみんなもそうしていると思い込んでいたのですが、蓋を開けばと随分と夢の無い評価損益率の人の多いこと。それに損益が二極化しているようです。(ワガシャの状況は後日考察予定)

 そこで世間の人はどうやって運用しているんだろうと気になって、ちょっと調べてみました。

 

分析対象(2020.3時点のデータです)

www.pfa.or.jp

 

前提、私の認識

・確定拠出型年金の仕組みは知っている。

・株価は変動が激しいが、預金や債券より収益率が良い。

・例えばS&P500指数はリーマンショック直後でも過去25年間の年平均投資収益率は10%以上で、長期的に株が下がったことは歴史上ない。

・そういうことで株式市場は長期的には安定成長し、かつ他の投資より収益がい良いことが分かっているので、それを利用した仕組みとして確定拠出型年金はアメリカで1978年に誕生し、世界に広まった。

・ということで基本的には株式で運用するもの。

確定拠出型年金のメリットとして所得税・住民税等の繰り延べがあるが、その本質は積み立ての原資を非課税所得にできることではないだろうか。

 仮に1万円積み立てるとすると、普通に積み立てる場合、税率が20%なら額面1万2500円を稼ぎ、課税後手取りの1万円を投資することになる。一方で確定拠出型年金であれば課税が繰り延べられるので稼いだ1万2500円のうち1万円が非課税のまま投資でき、2500円に対してのみ課税され2000円の手取りとなるので2000円を別の投資に投入することができ、計1万2000円を投資できる。積立NISA等を活用すれば、負担なく1.2倍近く積立額を増やせるはずである。これは無利子で2000円借りているのと同じではないだろうか。これは一般的な課税繰り延べの効果であるが、なんか無視されている気がする。

※計算を簡単にするために1万円が上限額と仮定。

 

 

 

素人ながら読み取れたこと

 企業型

・加入者と運用指図者は合計7,466,637人。これは確定拠出型年金全体の約75%。(内、10代0.6%、20代17.5%、30代24.4%、40代30.3%、50代24.0%、60代以降4.63% 男76.1%女23.9%)

・20代以下の人は運用額が30代の5分の1しかない。

・10代と20代、60代は預貯金が30~40代より10%高い。

・10代だけ突出してバランス型投信が多い(多分よくわかってないから響きで)。

・保険商品が年齢とともに好きになる。特に60代は保険大好き。(20代と比べ10%多い)

・30代40代で構成が似ていて、投信をもっとも好む。

・60代以降では投信の組み入れが減るが国内株式は減らさない。

・10~50代まで国内債券の比率は一定

・債権は全体に少ない。国内外合わせて約10%

・待機資金は少ないが最大の10代で0.9%ある

・国内株式を除いてパッシブ型が好まれ、76.6~87.5%を占める。国内株式はパッシブ型53.7%(国内株式はアクティブ型のほうが成績が良い商品があるためと思われる)。債権はよりパッシブ型が好まれる。

・元本確保型のみで運用しているものが34.1%。

 

 個人型 

・加入者と運用指図者は合計2,200,523人。これは確定拠出型年金全体の約25%(10代0.0%、20代5.8%、30代21.8%、40代35.8%、50代31.6%、60~4.97%)

・運用指図者が多い(ただし加入者の伸びが大きい)

・若年層が少ない(所得がないと始められないし、自主性に任せられている。10代加入者は187人資産額は全員で627万円。会社を退職したのかもしれない。)

・50代、60代は預貯金が30~40代より10%高い

・10代だけ突出して預貯金とバランス型投信が多い(やはり退職した人たちということか)。

・保険商品の伸び率が預貯金より高い(20代から60代で+20)

・国内株式、国内外債権投信の割合は年齢とあまり関係がない

・外国株式・バランス型投信の割合は年齢とともに下がる

・債権投信は全体に少ない(約9%)。

・待機資金は少ないが最大の20代で1.6%ある

・国内株式とバランス型を除いてパッシブ型が好まれ、76.1~80.8%を占める。国内株式とバランス型はそれぞれパッシブ型54.1%と52.8%(国内株式はアクティブ型のほうが成績が良いためと思われる)外国株式は最もパッシブ型が好まれる。

・全ての類型で年齢とともにアクティブ型の比率が上がる。

・10代はパッシブ比率が群を抜いて高い(10代は80~90%、他は40~90%)

 

共通

・企業型と個人型では、若年層において個人型がよりパッシブを好むが、年代が上がるとともに傾向が逆転する。特に国内外債権とバランス型で顕著。

・人数は企業型が多いが、伸びは個人型が上。

・コロナショックの影響は否めない。

・性差は性別ごとの年齢別データになっていないので不明。

MMFを買うものは居ない。

 

感想

面白いと思ったこと

・個人型は自主的に情報を集めて加入した人が多いと思われ、若年層ほどリターンの大きい株式を多く組み入れ、外国株式を国内株式よりも選好する傾向が強い。年代が上がるにつれ元本確保型の資産比率が奇麗に上昇していく傾向がある。企業型ではその傾向が弱く、勧められたので加入したが良く分からないので何となく選んでいる人が多いものと思われる。

・元本確保型商品においても、個人型で企業型より高齢者の保険組み入れ率が高く預貯金が低いのも、自ら調べて加入した割合が高いためと思われる。

・個人型の加入者187人のうちの数人は大儲けしたユーチューバーか何かかも知れない。

・企業型でも個人型でも国内株式の割合は年齢によらず一定なことは、高齢になるほど不合理な選択をする傾向を示しているように見える。

・結構パッシブ型が優れていることは広まっているようだ。

・受動的に加入した企業型でパッシブの比率が年齢の影響を受けないのは、年齢層による知識の差があまりないことを意味しているのかもしれない。

 
残念に思ったこと

・預貯金などという、説明するまでもなく恐ろしく無意味どころか有害な商品を多くの人が運用していること。ローリスクマイナスリターン。

・やっぱり元本確保型だけで運用している人が沢山いること。

・仕組み上、最初に多く積み立てる方が、退職間際に積み立てるより効果が大きいが、やはりお金がない20代の金額は小さい。

・アクティブファンドを買っちゃう人が沢山いる。バランス型のアクティブファンドって・・・。

 

不思議なこと

・敢えて若いうちに債権を買った人は、バランス型を買うより債権と株式を自分で混ぜたほうが信託報酬が安いと考えたのかもしれないが、そんな知識があってなぜ株式だけにしないのか。長期投資自体が十分なリスク分散なのに、リターンを下げる意味は何だろうか。債権に長期投資することはリスクの低下になるのか?

・個人型に限って、全ての投信の類型で年齢とともにアクティブ型の比率が上がっているが、どのような理由だろうか。窓口で勧誘されて騙されて購入している疑いが払しょくできない。なお、企業型の場合は個人に対して営業する機会がなく、手続きはネット。

・国内株式の比率だけが年齢の影響を受けないのは、やはり何かの信仰だろうか。信仰の介入は自然科学にとって有害である。金融は数学である。

 

考察

・証券会社は市場の伸びが大きい個人型で信託報酬の高いバランス型を買わせる営業を今後進めていくだろう(小並感)。

・海外株式の比率が他の投信よりも年齢とともに大きさがるのは、国内株式よりもハイリスクハイリターンですよっていう説明を鵜吞みにしている人が多いことの証左と思われる。

・元本確保型やバランス型という語感のいいものに運用が偏るのは、選択肢が多すぎるのが原因かもしれない。

 

提言

①おかねもちのおじいちゃんおばあちゃんは孫にideco代を払ってあげたらどうですか。

②そもそも歴史的にどういう経緯で生み出された制度なのか教育したほうが良い。

③将来は不安だけど、今は稼ぎのある人こそ始めたらどうだろうか。